目次
動機
ヴォーグ1号機のエンジンが2号機ほど軽快でない気がしていたので、とりあえずキャブレターをオーバーホールした。
納車以来、約25000kmぶりのオーバーホール。
調子よくなった気がするが満足できない。
さらにエンジンを開けて堆積しているであろうカーボンを除去すればもっと快調を得られるのでは、と思ってしまった。
生涯においてエンジンを分解した経験はない。
しかし4つのナットをはずすだけでヘッドとシリンダーがはずせるはずだ。
簡単なことだ。
そう思ってしまったのが2か月に及ぶ暗黒時代の始まりだった。
分解
ナットをはずす
ヘッドとシリンダーを留めているナット4つをはずす。
10mmのソケットでは小さすぎてはまらない。11mmで回ったけどなんか大きすぎる気がする。
パーツリストを見るとここのネジ径はM7。ナットサイズの記載はない。
M7なんてレアなナットサイズは調べてもめったに出てこないが基準寸法は11mmの模様。
ヘッドを引っこ抜く。ナットの下にワッシャーが敷いてあるので無くさないよう注意する。
ヘッドの掃除
ガスケットがくっついた状態でヘッドがはずれてきた。
破れてない。破れてたらどうするつもりだったんだろう俺。ドキドキした。
ヘッドにはカーボンが真っ黒く張り付いてツブツブが付着している。
傷つけないように慎重にとか思ったけどこの状態で走ってたなら少々傷ついてもどうってことないと開き直る。
燃焼室周りの平らな面は密着を損なわないように気をつけて磨いた。
ピストンの掃除
デコンプ穴に削りカスが入らないようにふさいで作業。
細かい筋がついているようだけど経験不足ゆえ、気にした方がいいのかわからない。
気にしない。
シリンダーを装着したままだとどうにもできないので、シリンダーをはずすことを決心する。
なに、引っ張ればはずれる、ただそれだけだ。
シリンダーの掃除
ガスケットボロボロ。
どうすんだよこれ?
排気ポートの穴。マフラーにつながってるとこ。
素人目にも性能に悪影響を与えそうなつまり具合。
25000kmほど走るとこれくらい詰まるということか。
吸排気ポートなら多少表面が荒れても問題なかろうとゴリゴリ削って、きれいになった。
ガスケットの残りカスやらの気になる汚れを除去して清掃完了。
シリンダーの燃焼室内面は汚れてないし、そっとしておく。
シリンダーベースガスケットの制作
シリンダーとエンジン本体の間に挟まるガスケットをシリンダーベースガスケットと呼ぶらしい。
今回ボロボロになったのがこれだ。
調べてみると汎用のガスケットシートで自作可能らしい。
ちょうど手元に汎用の1mm厚ガスケットシートがあった。
ダイソーの円形カッターもある。
A4コピー用紙にも同径の穴を開けてシリンダーブロックにはめて、汚れた指でこすって拓本をとる。
これでほんとに用を足せるのか?
シリンダー組付け失敗
続いてシリンダーブロックを装着。
しようとしたが、はまらない。
ピストンリングがどうしても引っかかる。
結束バンドで固定しつつやんわりと、しかし断固として押し込もうとした。
これがいけなかった。
こればかりは修復不能と思われる。
購入するしかない。
プジョー ヴォーグのような2ストロークエンジンのピストンは、ピストンリングの回転防止のポッチがピストンリング溝についていることを事後に知った。
これを無視してはめようとして折れたわけだ。
ピストンリングの調達
誤発注その1:合口形状が違う
プジョー ヴォーグSPのピストンの径は40mm、ピストンリングの厚みは1.5mm。上下のピストンリングに同じものを使用する。
これに合う汎用のピストンリングを探して発注した。
AliExpress、2個セット。送料込みで1015円。
しかしピストンにうまくはまらない。なぜだ?
購入したピストンリング。
切り欠きの形状が90度傾いている。
ポイントは径と厚みだけじゃなく、合口形状の合致も必須条件だったのか……。
誤発注その2:厚みを間違えた
合口形状の一致するピストンリングを探すが選択肢が少ない。ヨーロッパから購入すると送料が馬鹿みたいにかかる。
安いものを見つけた。
2x PISTON RING 40mm x 1.5mm PEUGEOT TKR TREKKER SPEEDFIGHT LUDIX BUXY ELYSEO
プジョーヴォーグ用のものではないが形状の条件は満たしている。
送料込みで1446円。発注。
しかし到着予定日を大きく過ぎても届かない。
メールフォームで問い合わせると再発送してくれるという。
その際、プジョー ヴォーグ用のピストンリングを見つけたのでそちらを発送してもらうようお願いした。
これがまずかった。
誤発送を指摘すると、これに変えてって言ってきたじゃん?と返答がきた。
確認すると確かにこちらが間違えて2.5mm厚のものを指定していた。
再発注する。
再発注:全然届かない
改めて正しいピストンリングを発注。
SET OF 2 PISTON RING 40mm 1,5mm PEUGEOT 101 102 103 ROLLER SCOOTER MOPED VINTAGE
こんどはプジョー ヴォーグ用にあつらえられた品だ。
送料込みで1520円。
しかし届かない。
到着予定日を大きく過ぎたので問い合わせをかけると再発送するとのこと。
しかし、再発送の連絡を受けた直後に届いた。
最初の発注から2か月と1週間かかった。
ピストンの掃除
ピストンリングを待つ間、ピストンもはずして掃除することにした。
ピストンとコンロッドをつなぐピストンピンを留めているサークリップを片方はずす。
エンジン内になにか落っことさないように詰め物をして作業した。
サークリップを外してない側から指で押すと、にゅーっとピストンピンとベアリングが出てきた。
パーツクリーナーを吹いて、ナイロンブラシやらつまようじやら、金属表面を傷つけないものでカーボンをこすり取る。
アルマイトにパイプユニッシュは禁忌
さらにきれいにしようと、カーボン除去に威力を発揮するはずのパイプユニッシュに漬けてみた。
10分くらいつけて様子を見たら、アルマイト加工がはがれてきていた。これはまずい。
直ちに性能低下はしないだろうけど、耐久性が落ちてしまったと思われる。
組み立て
コンロッドにベアリング装着。
コンロッドにピストンをかぶせてピストンピンをニューっと押し込む。
ピストン上面の小さな刻印があるほうを排気側=下側にする。
ピストンリングの向きを回り止めに合わせて、リングを押し縮めながらシリンダーブロックをはめてゆく。
アウタークラッチをカバーの隙間からこちょこちょ回すとピストンが上下する。
余って押し出されたオイルをふき取る。
ヘッドのガスケットを装着。
裏表があるのかはわからなかった。
シリンダーヘッドをはめて、ワッシャーをかませてボルトでゆるく仮締結。
ペダルをこいでセンターを出しつつ本締結。
締結トルクはいい感じに手トルク。
エンジン始動せず
ようやく組みあがったので意気揚々と試運転に出た。
が、エンジンかからず。
ハアハア言いながら漕ぎまくってもかかってくれない。
ガソリンは入ってるしプラグも火花が飛ぶ。
プラグがかぶってしまってるので何度も拭きながら始動を試みるも不発。
たまに「パン!」と破裂音がしてびびる。
自作ガスケットがやはりまずかったのか、とか、プラグコード掃除したのがダメだったのか、とかいやな考えが巡る。
とりあえず、と、かぶってるプラグを2号機のものと交換したら一発始動した。
プラグを元に戻しても始動するようになった。
かぶってたのが原因らしい。組付け時にシリンダーにオイル塗りすぎたのかもしれない。
試運転
走り出してからは快調そのもの。
明らかに以前より軽快になった。
速度も上がっている。
2か月ぶりに走れてうれしい。
ミッションコンプリート。
まとめ
- エンジンをばらすときはガスケットとかの消耗部品の目途をつけておくか、しばらく乗れない覚悟を決めておくべき
- ピストンリングを発注するときは合口形状も要確認
- アルマイトにパイプユニッシュは禁忌
- eBayはなかなか届かない
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